為替相場まとめ7月21日から7月25日の週
21日からの週は、日本の政治情勢や日米貿易交渉、主要中央銀行の金融政策を巡る思惑が絡み合い、特にドル円は激しい値動きとなった。週初、参院選での与党過半数割れを受け円が買われ、ドル円は先週末の148円台半ばから一時147円台半ばへと下落した。しかし、石破首相の退陣観測(後に否定)や日米関税合意への期待から円売りも出て、相場は乱高下した。ドルは米債利回り低下や経済指標の弱さから売られ、ドル円を押し下げる場面もあった。週後半は、日銀の年内利上げ観測や人民元高・ドル安でドル円は一時145円台後半まで値を下げたが、米新規失業保険申請件数の改善などから週末にかけて147円台へと買い戻された。総じて、円は政局不安や日米交渉を背景に不安定ながらも買い戻しの動きが見られた一方、ドルは軟調に推移する場面が目立った。株式市場では、日米通商合意の進展が好感され、日経平均株価が今週の高値を更新した。米国株も企業決算発表を消化しつつ底堅く、主要指数は堅調であった。ユーロドルはドル安の流れに乗って1.17ドル台後半へ上昇。ECBは金利を据え置いたが、9月利下げへの明確な示唆はなかった。来週は日米金融政策会合、米雇用統計、8月1日の関税期限を目前にして米国とEUや中国との貿易交渉の行方が注目される。
(21日)
東京市場は海の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円高の動き。参院選での自公勢力過半数割れを受け、週明けのロンドン市場は円高で推移した。ドル円は先週末の148.80円付近から147.80円付近まで下落後、148.60円付近へ反発する荒い値動きを見せたが、ロンドン序盤には147.70円付近まで安値を更新した。ユーロ円やポンド円といったクロス円も上値が重く、ユーロ円は173円付近から172円付近へ、ポンド円は199.65円付近から一時198円台前半まで値を下げた。日本の政情不安は通常円安要因だが、足元ではポジション調整の円買いが進んでいるようだ。海外勢は、今後の拡張的財政政策による円安リスクを警戒している。一方、ドルストレートでは米債利回りの低下に反応しドル安が進み、ユーロドルは1.16台前半から半ばへ、ポンドドルは1.34付近から1.34台後半へと買われている。
NY市場では円高とドル安が優勢。ドル円は147円台前半まで下落した。参院選の与党過半数割れ後も石破首相が続投を表明したことで、円買い戻しが続いている。財政拡大観測による長期金利上昇が円の支援材料となる一方、日米貿易交渉の不透明感やマイナス実質金利が円高の持続を阻むとの見方も存在する。ユーロドルは1.17ドル台を回復し、1.20ドルを目指す可能性を残した。今週のECB理事会では据え置きが濃厚だが、9月利下げの可能性も意識されている。米・EU間の関税交渉難航やユーロ高に対するECBの懸念も注目される。ポンドドルも1.35ドル台まで買い戻されている。英雇用統計の緩和を示す内容にもかかわらず、英中銀は慎重な利下げ姿勢を維持する必要があるとの見方が示されている。市場では8月利下げがほぼ確実視されているが、年内の追加利下げは完全には織り込まれていない。
(22日)
東京市場では、ドル円がややしっかりとした動きを見せた。週末の参院選での与党敗北を受け、ドル安・円高が進み、ドル円は昨日のNY市場で147.00台まで下落、東京朝も147円台前半で始まった。しかし、野党勢力による減税や社会保険料減額への警戒から見られた円債利回り上昇懸念は、本日低下傾向に転じ、日本国債10年物利回りは1.50%を割り込む1.495%まで低下し、円売りを誘った。これによりドル円は上昇に転じ、朝の147.20台から午後には147.84付近まで値を伸ばした。ユーロドルは1.16台後半で狭いレンジの揉み合いだった。ユーロ円はドル円の上昇に連れて172円台で推移し、172.78付近まで上昇した。午前中の豪中銀議事要旨は据え置き判断の妥当性を示したが、市場の反応は限定的だった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ドル円は148円手前まで買われたあと、147.50割れまで反落。東京市場からの上昇の動きを戻している。ユーロドルやポンドドルは狭いレンジとなっているが、ユーロドルは1.16台後半から1.1710付近まで上昇、ポンドドルは1.34台後半に軟化した後、1.35近くまで反発した。クロス円はドル円とともに振幅も、やや円安の動き。ユーロ円は172円台での振幅。ポンド円は198円台後半から199円台前半で売買が交錯している。今週に入ってからは参院選前に形成された円売りポジションに対する調整圧力がみられている。ただ、日本の政局不透明感も根強く、円高の動きにも持続性はみられていない。また、ベイリー英中銀総裁はドル売りが現在の市場で最も活発な取引との認識を示した。長期投資家がドル資産に対する過度の比重を望んでいない点を指摘した。
NY市場ではドル安が優勢。ドル円は146.30円近辺まで下落した。米国債利回り低下と円高がドル円を圧迫。FRBの独立性への懸念が利回り低下の背景とされるが、財務長官はパウエル議長の辞任は不要との見解を示している。ドル円の目先の下値メドは21日線の146円台前半、その下には100日線の145.70円付近が控える。市場は今月末のFOMCでのハト派シグナルや米政策の不透明感を注視しており、経済指標の弱さなどがドルのセンチメントを悪化させる可能性がある。ユーロドルは買い戻され、一時1.1760ドル付近まで上昇し、21日線を回復した。今週のECB理事会は据え置きが確実視されるが、9月利下げのヒントやユーロ高への懸念表明に注目が集まる。ポンドドルも1.35台を回復し、6月のサポート水準で反転した。アナリストは、今週発表のPMI調査でユーロ圏経済が英国を上回れば、ポンドはユーロに対して下落する可能性があると指摘している。
(23日)
東京市場は、日米関税合意と石破首相の退陣観測報道を受け、ドル円が不安定な動きを見せた。前日146.30前後まで下げたドル円は、日米関税合意報道で一時146.25付近まで急落後、146.90台まで急騰。その後、石破首相退陣観測報道で円売りが強まり、昼前には147.21付近まで一段と上昇した。次期候補とされる高市議員の利上げ消極姿勢や、関税合意直後の政治空白への警戒感が円売りを誘ったと見られる。ただし、石破首相は退陣報道を否定している。日本10年債利回りは1.597%と2008年以来の水準まで上昇した。ユーロドルは1.17台、ポンドドルは1.35台前半で推移。ユーロ円もドル円の上昇に伴い一時172.70台まで上昇したが、ドル円と同様に不安定な値動きだった。
ロンドン市場では、日米通商合意を受けたリスク選好の動きが広がっている。欧州株が上昇し、米株先物も買われ、長期債利回りが上昇した。為替市場ではややドル売りが進み、ポンドドルは1.35台前半、豪ドル/ドルは0.65台後半、ドルカナダは1.35台後半で推移している。一方、ユーロドルは明日のECB理事会や米欧通商協議を控え、1.17台前半で上値が重い。ドル円は、東京市場での激しい変動後、ロンドン市場で147円台を割り込み146円台前半へ軟化。クロス円も同様に上値が抑えられ、ユーロ円は171円台後半へ、ポンド円は197円台後半へ下押しされた。全体的にリスク選好ムードが見られるものの、為替相場の方向性はまちまちだが、ボラタイルな値動きは落ち着きつつある印象。
NY市場でドル円は一時146.10付近まで下落した。ただ、その後は21日線(146.20円付近)でサポートされ下げ渋った。さまざまな面から円安材料が指摘されるなかで、今回の日米合意も円安を助長するとみられている。さらに、次期首相が高市氏の場合、積極財政による財政拡大や日銀への利上げ圧力から、さらなる円安シナリオが予想される。ユーロドルはNY時間に入って買いが優勢となり、1.17ドル台後半へ上昇。ドル軟調に加え、EUも米国と15%の関税合意に接近との報道がユーロをサポートした。ポンドドルは3日続伸し1.35台後半まで上昇したが、アナリストからは英財政問題が背景となり、ポンドの対ユーロでの下落継続や全体的な下押しリスクが指摘されている。6月の英政府借入額が記録的な高水準だったことが、財政持続可能性への懸念を再燃させている。
(24日)
東京市場では、ドル円が振幅。午前には日銀の早期利上げ観測や人民元高・ドル安の流れを受け、一時145.86付近まで下落した。ラトニック米商務長官によるパウエルFRB議長辞任要求もドル売りの要因となった。午後は下げ止まり、146.20台まで値を戻している。今晩のトランプ米大統領によるFRB本部視察が注目される。ユーロドルは、ECB理事会とラガルドECB総裁の会見を控え、1.1762付近まで下落する場面もあったものの、下値は限定的。揉み合いが続いている。ユーロ円はドル円の下げに連れて午前に172円を割り込み171.76付近まで下落したが、午後は下げ渋り172円を回復した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。東京市場でのドル売りから流れが反転している。米10年債利回りの4.38%から4.40%台への上昇に伴いドル買い圧力が強まった。ドル円は東京市場での高値146.54近辺から145.86近辺まで下押しされた。しかし、ロンドン時間に入ると反発が強まり、146.66近辺まで高値を伸ばしている。ユーロドルは1.1743近辺に安値を広げた。ポンドドルも安値を1.3535近辺に更新。この日発表された7月ユーロ圏PMI速報値は製造業49.8、サービス業51.2と前月から改善した。対照的に英PMI速報はサービス業51.2と予想を下回り、ユーロ買い・ポンド売りを後押しした。欧州株は米欧貿易協議の進展や合意期待で堅調に推移している。この後のECB理事会では政策金利据え置きが見込まれている。前回の利下げ効果を見極める方針とみられている。ラガルド総裁会見が注目されている。
NY市場でドル円は反発。東京時間に一時145円台へ下落したが、NY時間にかけて買い戻され147円手前まで戻した。米新規失業保険申請件数の改善と米国債利回りの上昇がドル円をサポート。日米の関税合意による不透明感解消や日銀の利上げ期待がドル円の重しとなっていたが、積極的に下値を試す動きはなかった。ユーロドルは買い戻され、一時1.17ドル台後半まで上昇し、21日線を回復。ECB理事会は金利を据え置き、「ECBは良い地点にある」とした。「経済指標次第で、理事会ごとに判断」とする様子見姿勢を示し、関税に関する不確実性を理由に挙げた。ラガルド総裁の会見では9月利下げへの明確なヒントはなかったものの、短期金融市場での追加利下げ期待は後退し、9月利下げ確率は25%程度に低下した。ポンドドルは売りが優勢。、1.35ちょうど付近まで下げ幅を拡大。21日線(1.3565ドル付近)で上値を抑えられた。きょうの英PMI速報値結果を受けて、短期金融市場では8月利下げ期待が90%以上に高まっている。
(25日)
東京市場では、ドル円が振幅。東京午前に147円ちょうど付近から147.50付近まで上昇した。朝方発表された東京消費者物価指数(7月)が予想を下回り、日銀の利上げ期待が後退したことで、円売りが優勢となった。ゴトウビによる外貨需要の影響もあったもよう。午後には一転して円が買い戻されている。取引終盤には通信社が日銀の年内利上げ観測を報じると146.82付近まで安値を広げた。ユーロ円は一時173.18近辺まで買われた後は、この報道を受けて172.48近辺まで下落した。日本国債10年利回りは1.605%まで急騰し、2008年以来の高水準となった。ポンド円は198.13付近まで下落。一方、ドル相場自体は動意薄で、ユーロドルは1.1750前後で揉み合った。
ロンドン市場では、円相場が神経質に上下動している。来週の日銀決定会合を控え、観測報道に反応した動きだ。東京午後には、日銀関係者筋の情報で「年内利上げできる環境が整う可能性がある」と伝わり、円買いが強まってドル円は147円を割り込んだ。その後下げは一服し、ロンドン序盤には「日銀が追加利上げ見送りの公算大、7月会合で物価上昇率を上方修正へ」との報道を受けて円売りが広がり、147.49円の東京高値を上回ってショートカバーを誘発。高値を147.90円付近まで伸ばし、その後も高止まりしている。クロス円も円買いから円売りに転じており、ユーロ円は172円台半ばから173円台後半、ポンド円は198円台前半から199円台前半で推移。ユーロは堅調で、対ポンドは連日の上昇となっている。これは、ECB理事会で9月利下げのヒントが得られず、8月利下げが予想される英中銀とのスタンスの違いが背景にある。ドル相場はドル買い優勢で、このところのドル安の流れに調整が入っている状況だ。
NY市場でドル円は途中で伸び悩んだものの、一時148円台をうかがう展開を見せていた。ドル高がドル円をサポートしていたが、前日の米新規失業保険申請件数が雇用の力強さを示していたことや、トランプ大統領が改修工事を行っているFRB本部を訪問後、「パウエル議長を解任する必要はない」と述べたことで安心感が広がり、ドル買いの反応に繋がっているようだ。

執筆者 : MINKABU PRESS
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