為替相場まとめ7月28日から8月1日の週
28日からの週は、ドル高・円安・ユーロ安。ユーロ安は先週末の米国とEUとの関税合意に内容に仏独から不満の声が上がったことが背景。ドル高はユーロドルの下げが影響するとともに、米FOMCでのパウエル議長会見で利下げに慎重な姿勢が確認されたことが背景。円安は日銀決定会合後の植田日銀総裁会見で早期の追加利上げに慎重な姿勢が示されたことが背景。ドル円は週明けの147円前後から週末にかけて150円台に乗せた。ユーロドルは1.17台から1.14付近まで下落。ポンドドルも1.35付近から1.32付近へと水準を下げた。クロス円は日銀会合までは円高傾向を示したが、その後は円安に振れた。ユーロ対ポンドではユーロ売りが優勢だった。週末のトランプ関税発動で株安の動きが広がった。米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったが、特に前回分が当初の14.7万人増から1.4万人増に下方修正されたことは驚きとなった。ドル円は完全に下向きに途転(どてん)し、147円台前半まで急降下した。
(28日)
東京市場では、ドル円が底堅く推移。ドル円は、今週の日銀金融政策決定会合や米連邦公開市場委員会(FOMC)などを控えて模様眺めムードが広がり、147円台後半を中心に方向性の定まらない展開となった。午後は米10年債利回りの上昇などからややドル買いが優勢となり、一時148.17付近まで上昇した。きょう午後3時30分から2時間の予定で開催される自民党の両院議員懇談会では、石破首相の早期退陣の可能性が高まるかどうかに注目が集まっている。ユーロ円などクロス円はやや円売り優勢。ユーロ円は173円台後半、ポンド円は198円台後半でもみ合いとなった。米国時間日曜日の午後に、米国とEUが15%関税で合意と報じられた。週明けのオセアニア取引開始時にはユーロが一時上昇。しかし、その動きは続かず東京市場では揉み合いが続いた。午後にドル高に振れ、一時1.1711付近まで軟化した。
ロンドン市場は、ユーロが軟調に推移している。仏首相が米国・EU貿易合意の内容を批判したほか、独産業連盟も理想的なものではないと苦言を呈した。欧州株はほぼ全面高で取引を開始したが、次第に上げ幅を縮小してきている。独自動車株は下げに転じている。この動きを受けてユーロドルは1.17台後半から1.16台半ばへと軟化。対円や対ポンドでもユーロ売りに押されている。ユーロ円が173円割れへと下押しされる一方で、ポンド円は199円台乗せへと買われている。ドル円は147円台から148円台へと買われている。全般的なドル高圧力とともに、日本政局動向に神経質な動きを示している。自民党両院懇談会で、石破首相は続投を表明したが、参加した複数関係者からの情報として「 首相の退陣要求多数、続投支持少数」と報じられている。まだ、政局に対する不透明感は続きそうだ。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は148円台半ばまで上昇した。今週は重要イベントが多数控えており、市場はそれらの結果を見極めようとする動きが強い。主要IT企業の決算、FOMC、8月1日の関税期限、GDP速報値、PCE価格指数、米雇用統計が予定されており、円に関しては日銀金融政策決定会合も開催される。特にFOMCが注目されており、米国経済の回復とインフレの持続性が、FRBの9月利下げ見通しをさらに後退させる可能性が指摘されている。日銀会合については政策の据え置きが確実視されており、米国の関税影響や石破政権の動向に対する不確実性が要因とみられる。ユーロドルは戻り売りが強まり、1.15ドル台まで下落した。米・EU貿易合意にもかかわらず、関税による経済悪影響への懸念が広がり、ユーロはネガティブな反応を示している。エコノミストからは「欧州は出口のない不均衡な協定に閉じ込められた」との見解も出ている。ポンドドルも下値を探る展開が続き、これまでの強いサポートであった1.34ドルを割り込んだ。英国の小売統計も低調であり、経済減速懸念が強まっている。
(29日)
東京市場では、リスク回避の動きが広がった。ドル円は前日からの高値圏で始まり朝方には一時148.7近辺1まで上昇。18日以来の高値水準となった。しかしその後は円買いに転じた。本日、明日と続く米FOMCなどの重要イベントを前にリスク警戒の動きが広がり、ドル買いと円買いが同時進行。日経平均が300円超の下げとなるなかでドル円は午後に148.16近辺まで下落した。クロス円も軒並み下落。ユーロ円は、年初来高値の173.97近辺をつけたあと、前日安値を割り込み171.56近辺まで下落。ポンド円も同様に、朝の198.50前後から197.78近辺まで下落。ユーロドルは、リスク警戒のドル買いにより、1.1575近辺まで一時下落。ポンドドルもユーロ安に連れ安となり、午後に一時1.3337まで売りが出ている。
ロンドン市場は、ドル買いが先行したあと、戻す動き。昨日は米国とEUとの貿易合意内容について市場に懐疑的な見方が広がったが、きょうは欧州株が堅調に推移しており、リスク動向は落ち着いている。ユーロドルは1.16手前水準からロンドン朝方には1.15台前半に下落したが、その後は1.15台後半へと買い戻されている。ユーロ円も売りが先行し、172円台前半から171円台前半へと下押しされたあと、ロンドン時間には172円付近まで反発。対ポンドでもユーロ売り先行後は買戻しが入っている。欧州企業決算で米関税にもかかわらず好決算を発表する企業が散見されていた。ポンド相場も下に往って来い。対ドルでは1.33台で、対円では197円台後半から198円台半ばで振幅している。ドル円は148円台で売買が交錯している。ロンドン朝方には148円台前半に下押しされたが、その後は148円台後半へと高値を伸ばした。足元では148円台半ばと前日NY終値付近に落ち着きどころを見出している。米FOMCや日銀決定会合を控えて一方向に動きにくいムードもあるようだ。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は一時148円台後半まで上昇した。しかし、米国債利回りの低下が影響し、149円台を試すことなく伸び悩む展開。7月の米消費者信頼感指数が予想を上回ったことは、ドル高を後押しする要因となった。明日の米FOMC結果発表を控えて、年初から積み上がっていたドルショートの巻き戻しが活発化している。米中協議は、関税措置の期限延長で終了。ベッセント財務長官は90日間の延長の可能性に言及したが、市場の反応は限定的だった。ユーロドルは下値模索が続き、一時1.1520ドル近辺まで下落。7月中旬の直近安値を下回り、下値警戒感が強まっている。ポンドドルも一時1.3310ドル近辺まで下落し、100日線に顔合わせしたことで下値警戒感がさらに強まった。英中銀の貸出統計によると、6月の英家計貯蓄は増加し、消費者の慎重姿勢が鮮明になった。これは英国経済の減速懸念を裏付けるものとなっている。
(30日)
東京市場は、円買いが優勢。朝にカムチャツカ半島沖でのM8.8規模の地震が発生。日本でも津波警報が発令され、リスク警戒の動きが広がった。ドル円は朝の148.50前後から昼にかけて147.85付近まで下落。午後も上値の重い展開が続いた。ユーロ円は朝の171.50前後から171.00を割り込み170.90近辺まで下落。ポンド円も朝の198.35付近から午後の円買いで197.45付近まで下落した。ユーロドルは午前中にドル円の下落に伴い一時1.1570台まで買われたが、上昇は続かず午後に1.1540台まで値を下げた。午前の豪消費者物価指数は、第2四半期・6月ともに前年比が予想を下回る弱い伸びとなった。この結果、次回の豪中銀金融政策会合での利下げ期待が高まり、豪ドル売りが進んだ。豪ドルドルは0.6510前後から0.6503近辺まで下落。豪ドル円も96円台後半から前半へと押し戻された。
ロンドン市場は、米FOMCなどのイベントを控えて調整色が強い。ドル円はロンドン時間には147.80付近でサポートされると148.30付近へと買い戻されている。ユーロドルは東京午前に1.15台半ばから後半へと買われたが、ロンドン時間には1.15台前半へと下押しされている。ポンドドルは逆に1.33台前半から1.33台後半へと買われたが、足元では上昇一服。ユーロ売り・ポンド買いのフローがみられた。ECBが今後の賃金鈍化見通しを示していた。また、ECBはブログで米中協議決裂なら、ユーロ圏インフレ鈍化の可能性が指摘された。ユーロ圏GDP速報値は前期比+0.1%と予想変わらずを上回るも、前回+0.6%からは鈍化した。主要国は独伊が前期比-0.1%と冴えない一方、仏は+0.3%と予想を上回っていた。
NY市場では、FOMC後のパウエル議長の会見を受け、ドル高が加速した。ドル円は一時149.50付近まで上昇。議長が「経済は当面、緩やかな金融引き締めを必要としている」と述べたことで、早期利下げ期待がさらに後退した。トランプ大統領の9月利下げ発言に対し、議長は「次回会合までにデータが明確になるかは難しい」と消極的な見解を示した。短期金融市場では9月利下げは半分以下の確率となっている。朝方に発表された米GDPやADP雇用統計が予想を上回ったこともドル高に拍車をかけた。特に米GDPは3.0%のプラス成長となり、利下げに慎重なFRBの姿勢を正当化する内容と受け止められた。ユーロドルは1.15ドルを割り込み、1.14ドル台前半まで急速に下落した。一方、第2四半期のユーロ圏GDP速報値は予想以上の成長を示し、ECBが再び利下げを行う可能性は低いとの指摘が出ている。ポンドドルは1.32ドル台半ばまで下げ幅を拡大し、100日線を下抜けた。市場は英中銀の8月利下げ期待を高めているが、エコノミストからは英中銀がインフレと成長見通しを上方修正する可能性が指摘されている。6月の英インフレ率が予想を上回ったことなどがその論拠。
(31日)
東京市場で、ドル円は上昇一服。午前に前日のドル高円安の反動などから軟化し、149円を割り込んだ。正午ごろに日銀金融政策決定会合の結果が公表されると一段と下値を広げ、一時148.59付近まで下落。日銀金融政策決定会合で、政策金利は市場予想通り4会合連続で据え置きとなったが、経済・物価情勢の展望(展望レポート)で物価見通しが大きく引き上げられ、追加利上げ観測が強まったことに反応。午後は下げが一服したものの、戻りは限定的。午後3時30分からの植田日銀総裁の会見を控えて148円台後半で小動きとなった。ユーロドルはドル売り優勢。米10年債利回りの低下からドル安傾向となり、午後に一時1.1454付近まで上昇した。ユーロ円はドル円同様に円買い一服となり、一時169.73付近まで下落したあと170.30台まで戻した。ポンド円も197円割れに沈んだ後、197円台半ばまで戻した。
ロンドン市場で、ドル円は150円台に乗せた。東京午後の植田総裁会見で、基調的な物価が2%にまだ届いていないことを改めて示したほか、今回の物価見通し引き上げがコメなど食料品の値上げによるもので、今後影響が減退していくことを示すなど、早期の追加利上げに慎重な姿勢が示されたことで、円売りが強まった。ドル円は東京市場でいったん下げた分、勢いがつく形で買われ150円台を回復する動きを見せている。クロス円も軒並みの大きな反発。日銀会合後に169.70付近まで下げたユーロ円は171.70前後と安値から約2円の上昇。ポンド円は日銀会合後に一時196円台を付けていたが、198.50超えまで反発している。ユーロドルは1.14台で方向感なく推移。ポンドドルなどがロンドン市場に入ってやや重くなる中、ユーロドルも高値から少し売りも、下がると買いが出る展開。
NY市場では、ドル円が上値を追う展開となり、一時150円台後半に急上昇。NY時間に入ってドル全般が堅調なことに加え、植田日銀総裁が「2025年度の物価見通しの上方修正だけで金融政策は左右されない」と発言したことで、早期利上げに慎重との受け止めから円安が進行した。市場の注目は明日発表される7月の米雇用統計に移っている。ユーロドルは買い戻しが入ったものの、上値は重い印象。1.14ドル台は維持したものの、積極的な買いは限定的。前日のFOMC後のドル高加速で、ユーロドルは一時1.14ドルちょうど付近まで下落。100日線が本日1.13ドル台半ばに位置しており、目先の下値メドに。短期金融市場では、ECBが年末まで金利を2%に据え置くとの見方が強まり、年内の追加利下げ予想が後退している。ポンドドルはNY時間に入って下げ止まったものの、下向きの流れは継続し、一時1.31ドル台に下落する場面があった。来週の英中銀金融政策委員会では利下げが確実視されているが、市場は既に織り込み済み。
(1日)
東京市場は米雇用統計を控え、ドル円は神経質な展開。午前中に150.92付近まで小幅に前日高値を伸ばしたあと、ポジション調整で午後に150.42付近まで下落したが、依然ドル高・円安圏で堅調を維持。ユーロドルはドル高圧力を受けてで上値が重く、安値は1.1405付近までと昨日海外市場とほぼ同水準だった、1.1400割れには慎重。ドル円の調整に伴い午後に1.1436付近まで上昇した。ユーロ円は172円台前半で推移した後、ドル円の調整売りで171.90台まで反落。ドル全面高を受け、ドル人民元は朝に7.2108付近と5月以来のドル高・元安水準を記録。その後も7.2080前後とドル高・元安圏で推移している。
ロンドン市場は、ドル買い・円買いの動き。トランプ関税の発動を受けて欧州株や米株先物・時間外取引が下落しており、リスク警戒の動きに押されている。欧州ではスイスに39%の高関税が賦課される。スイスフラン売り・ドル買いがけん引するなかでポンドドルやユーロドルも上値重く推移している。ポンドドルは1.31台前半、ユーロドルは1.14台割れに軟化。クロス円とともにドル円も150円台前半に安値を広げている。ユーロ円は171円台半ば、ポンド円は197円台後半へと下押しされている。ポンドは対ユーロでも軟調。今週のドル高の流れが継続している。ただ、米雇用統計発表をこのあとのNY時間に控えており、値幅は比較的抑制されている。トランプ米大統領は自身のSNSで再びパウエルFRB議長に今すぐに大幅な利下げを実施するべきと主張している。
NY市場は、この日発表の7月の米雇用統計を受けて、ドル円は完全に下向きに途転(どてん)し、147円台前半まで急降下した。非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったが、特に前回分が当初の14.7万人増から1.4万人増に下方修正されたことは驚きとなった。大幅過ぎる下方修正で、これは市場の金利見通しに疑問を投げ掛けるだけでなく、底堅い米経済という重要な前提を揺るがとの指摘も出ていた。これを受けて今週のFOMCで後退していた早期利下げ期待が復活。短期金融市場では10月利下げを再び完全に織り込み、年内2回の利下げ期待も完全に復活している。

執筆者 : MINKABU PRESS
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